父、娘で同じ道に

弊社の工房には親子で日本の物作りを支えている職人がいます。
今回はその親子がどのようにもの作りの世界に入り、どのような思い出で
日々の物作りに携わっているか等を書きたいと思います。


<渋谷さんへのインタビュー>
・渋谷さんの経歴や今の担当を教えてください。
会社に入社して43年位です。今は主に革の裁断の仕事をしています。
前職は鉄鋼の工場で働いてまして、その後、高屋に入社をしました。
入社してからは小岩にあった製造部と言う部署に入り、材料の発注や外注の手配、革の裁断していました。現在は主に裁断を担当しています。
・今はどのように働いてますか?
5、6年前に一度定年で退職をしてますので現状は仕事がある時だけ出勤してる状況です。(しかし仕事は常にあるらしくほぼ毎日出勤されているとの事です)
この年まで仕事をするのは大変だけど、楽しさもあるので続けられますね。
やりがいもあるので体が動く限りは現役で続けられたらと思っております。
・この仕事を始めたきっかけは?
前職から転職する時に、元々物作りに興味があったのがきっかけです。
しかし革製品のバッグや小物に興味があったわけではありません。働き始めて
からはその難しさからだんだんと興味が沸いてきて気づいたら40数年続けています。
・もの作りの楽しさややりがい、喜びは何ですか?
自分が裁断したものが商品になった時です。
嬉しさもありますが同時に反省する点もあります。
・難しさや苦労したことは何でしょうか?
裁断時に革の良し悪しを見極めながら作業する事。
商品の完成をイメージして、特徴を考えて作業するのはとても難しい。
特に蔵前工房の革は表面に余計な加工をしてないので革本来の味が出るので
傷やしみがどうしても入ってしまうのでそれを避けながらの作業はとても苦労しています。
・今の日本の物作りをどのように思いますか?
欧米などのブランドに負けないように良い製品を作り続けたい。
昔より皮革の状態が悪くなったと感じるので、裁断もより技術が必要になりました。
・工房の若い人達に伝えたいことはないんですか?
特にはありませんが、わからない事があればいつでも相談してほしいと思っています。
・娘さんも同じ道に歩まれましたがどのような心境ですか?
私が長く続けた仕事に興味を持ってくれて、とても嬉しく思っています。

<渋谷さんの娘さんへのインタビュー>
・物作りの経歴を教えてください。
5年位です。担当は小物製造の補助でヘリ返しなど縫製までの準備作業や
仕上げ段階の糸の熱処理、検品前のチェックもやっています。
・この仕事を始めたきっかけは?
入社前に父を通して工場より革巻きの内職の依頼がありましてやっていました。
その時に革に触れ、物作りに関わるようになって興味が湧いてきました。
その後、工場から求人募集があったので本格的に物作りをやってみようと思いました。
・もの作りの楽しさ、やりがいや喜びは何ですか?
財布には多くのパーツがあるので、そのパーツがひとつになり製品になった時に喜びや楽しさを感じます。
・難しさや苦労したことは何でしょうか?
精密な作業に対応しないといけない所です。例えば糸を熱処理をする時に
製品を焦がさないようにする時などは大変気を使います。
・今の日本の物作りをどのように思いますか?
限られた時間の中で若い人達に技術を伝えるのは大変だと思いました。
伝統技術を守るためにはベテランの職人が若い人に技術を教えますが、
物作りに大事なのは人と人のつながりが大切だと思いました。
今までは商品を買う側だったのですが物作りをするようになって、買い物に行くと、作り手目線で物を見るようになり、アジア生産品と日本製の完成度の違いがわかるようになりました。そして市場にはアジア生産品がとても多いと感じました。
・工房のベテラン職人から学んでいる事は何ですか?
間近で技術を見たり習得できるのは貴重です。わからない事はベテラン職人によく聞きます。皆さん良い人達で、とても聞きやすい良い環境だと思います。
・お父様と同じ道に進みましたがどのような心境ですか?
良い時もあれば悪い時もあリます。今はフロアが違うので仕事中は話しません。しかし自宅では技術的な事など、こうした方がいいのでは?と相談する事も少しはあります。