職人・若手の育成
鈴木 忍 職人歴 2年5ヶ月

まだまだ全然難しいし、出来ないことの方が多いです。先輩に聞いてやってみてもらったりもするのですけど、なかなか。それでも今は少しづつできる幅が増えて来ています。

元々カーヴィングをやっていて、ちゃんと作りたいと思ってバッグを作る学校に1年半ほど通いました。器用である自覚は元々なかったのですが、父親に昔木版の版画を教えてもらっていたからか、カーヴィングをやってみたときに意外に思っていたよりも出来て、それから革製品を作り始めました。その後こちらで職人として働き始めて今、2年5ヶ月になります。

働き始めの頃は製造の全体の流れの中のでの一人としてやっていたのですが、ある時からLファスナー型の財布を任せてもらって作っています。はじめての時は下準備的なことだけをやって、縫いなどの仕上げの仕事は先輩方がやるのかなと思っていたら、「やっていいよ」と、全部をいきなりやらせてもらうことになったんです。失敗しても、失敗しないと上手くならないから、と。とにかくやらせてもらって、練習じゃない、商品になる本番なので、プレッシャーがあって。だからこそこれまでできるようになって来たのかなと思っています。
この世界は下積みが長くてすぐにミシンをかけられるという世界ではないと思っていたので驚きもありました。ありがたいなと、この環境は自分にとっては天国です。
日々一つ一つ出来なかったことができるようになっていくのが嬉しいです。出来ているのを感じると前に進んでいる実感があります。

作っているときに上手くいかないとまずは自分でも考えるのですけど、師匠である齋藤さんに聞きにいきます。齋藤さんが、「みんなはこうではないかもしれないけれど自分はこうやるよ」と教えてくださる。自分のやりやすいと思う方法でそれまでやってはいたのだけれど、ちゃんとしたそのやり方を見せてもらって真似させてもらって。そうするとすぐにはその通りにできないけれど、動きに近づいていけばいくほど、スッとできてしまう、ということがこれまでにも多々ありました。手の動かし方やちょっとしたところなのかもしれないのですけれど。

“早く作る”ということを意識していたのですけれど、今は”綺麗に作る”、ということがあってこそだなと思っています。自分にはまだ技術がないのでないがしろになってしまいがちなのですが、もう少し一つ一つの作業を意識を持ってやっていく。綺麗に、それが自分には今大事だと思っています。作り始めの最初から丁寧に作っていけば、後で直さなくてはいけないということがない。一つ一つその細かいところを出来てこそ、最後によく出来たなという満足があるのかなと思うので、得意なことを一つづつ増やしていきたいです。

先日妻に財布をプレゼントしました。いつも応援したり手伝ってくれたりしているので、喜んでくれて大成功でした。普段作る一つ一つもひとりひとりのところへ届いていく。やはり喜んでもらえるのが嬉しいです。

近々職人として独立をすることが決まっています。独立すれば自分で努力してやっていくしかない、ここにいられる限られた時間の中で、教われるだけのことを教わって、頭にインプットして、それをその先で引き出してやっていくことになるのだと思います。きっちりやって、ここで必要な存在になって、しっかり成長して。あの頃自分に教えてよかったな、と思ってもらえるようにしたい。それでしか返すことはできないと思っています。濃い場所で働かせてもらっているし、皆さんのおかげでここまで出来ているので、見ていただけるように、しっかり答えていきたいなと思っています。いい職人さんはいい職人を育てられるということなんだよ、と先輩方から聞いています。それは自分の助けになる、上手な人を育てられるからということ。いづれは自分もやっていて人に教えられるような職人になれたらなと思います。まだまだですし、登れる山なのかわからないけれど、できる限り近づいていきたいです。